電気通信工事の令和6年法改正|許可要件対応5つの実務ポイント
電気通信工事業を営む事業者の間で、令和6年の建設業法改正への対応が急務となっています。技術者資格の要件、施工実績の証明方法、電気工事との工事範囲の切り分けなど、これまでの運用と異なる点が複数あり、許可更新時に基準未達となれば事業継続そのものに影響が及びかねません。本記事では、電気通信工事業の現場を見てきた経験から、令和6年改正の要点と経営者・現場責任者が今すぐ着手すべき対応を、5つの実務ポイントに整理してお伝えします。書類作成の実務から従業員育成まで、限られた時間で最大の効果を得るための優先順位を明確にしていきます。
令和6年法改正による電気通信工事の許可要件の主な変更点
令和6年の建設業法改正では、電気通信工事業に関する技術者資格要件・実務経験の定義・営業実績書類が大きく見直され、施工管理技士制度の規定強化と認定資格の拡大が図られています。
技術者資格要件の厳格化と実務経験の定義変更
令和6年改正の中核をなすのが、技術者資格要件の厳格化です。電気通信工事施工管理技士の試験受験条件が改定され、実務経験年数の算定方法や証明方法が従来より厳密化されています。特に注目したいのは、実務経験の証明が「書面ベース」で行われるようになった点です。過去には現場担当者の記憶や簡易な帳票で足りていた運用が、契約書・施工実績書・発注者確認書といった一連の文書によって裏付けられる形へと移行しました。
現場で実際によく見るパターンとして、下請け工事や一部工程のみを担当した工事について「どこまでを実務経験に含めてよいか」の判断で迷うケースがあります。改正後は、工事全体の中で自社が担った工程・工事金額・期間を具体的に記録に残しておくことが、後の資格申請や許可更新で有利に働きます。既存の受験予定者については経過措置が設定されているため、現在何年目の実務経験を積んでいる社員がどの区分で受験できるかを、早い段階で洗い出しておくことをおすすめします。
新認定資格制度と既存資格の扱い
もう一つの重要な変更は、認定資格の範囲拡大です。特定の技能講習や民間認定資格が、電気通信工事業の許可要件で認められる資格として新たに位置付けられました。これにより、施工管理技士のみに依存していた技術者確保の選択肢が広がる一方で、既存の資格保有者については経過措置期限を意識した対応が必要となります。
ここで注意したいのは、経過措置には「無期限」のものと「期限付き」のものが混在している点です。専門的な観点から重要なのは、自社の技術者が保有する資格が改正後もそのまま有効なのか、それとも一定期間内に追加要件を満たす必要があるのかを一覧化しておくことです。お見積もり・ご相談の段階で許可要件に関する疑問がある場合は、お問い合わせはこちらからご連絡ください。現場感覚に基づいた実務的な整理をご提案します。
| 項目 | 令和6年改正前 | 令和6年改正後 |
|---|---|---|
| 実務経験の証明 | 簡易帳票で可 | 契約書・実績書必須 |
| 認定資格の範囲 | 限定的 | 拡大 |
| 工事範囲の定義 | 運用で判断 | 法令で明示 |
| 実績書の記載項目 | 簡略化可能 | 詳細記載必須 |
電気通信工事の工事種類の定義と許可範囲の明確化
令和6年改正では電気通信工事の範囲が再定義され、通信ケーブル・光ファイバー工事と電気工事の境界線が法令で明示されました。これにより、許可の及ぶ範囲を厳密に理解する必要性が高まっています。
通信ケーブル・光ファイバー工事と電気工事の区分
これまで運用ベースで判断されてきた「電気工事と電気通信工事の境界」が、改正によって条文レベルで整理されました。通信ケーブル敷設・光ファイバーの引き込み・通信機器の設置は電気通信工事の範疇であり、一方で低圧の電力線引き込みや分電盤工事は電気工事に分類されます。ただし、低圧の引き込み工事でも通信機能に付随する工程については電気通信工事に含まれる場合があり、この判定軸を現場ごとに整理しておく必要があります。
現場を見てきた経験から言えば、通信設備の設置に伴って発生する電源周りの工事で判断に迷うケースが少なくありません。例えば、通信機器用の専用コンセントを新設する場合、機器設置の一部として電気通信工事で処理できるのか、独立した電気工事として扱うべきかは、工事の主目的と作業内容の比重で判断されます。この判定を誤ると、後述する無許可工事のリスクにつながります。
許可範囲外の工事を受注した場合の法的リスク
許可を持たない業種の工事を請け負った場合、建設業法上の無許可営業に該当する可能性があります。この場合、事業者本人だけでなく、発注者側にも確認義務違反が問われるケースがあるため、契約段階での明確化が重要です。専門的な観点から重要なのは、混合工事を受注する際に契約書で工事内容を分別記載することです。
具体的には、電気工事と電気通信工事が混在する契約では、それぞれの工事内容・金額・工程を明示し、必要に応じて別契約または一括契約内で内訳を明確にする運用が求められます。過去に対応した事例では、通信インフラの新設工事で電気工事部分を協力業者に分担発注し、契約書上も明確に区分することで、双方の許可範囲内で完結させた例もあります。詳しい業務内容や施工事例については業務内容・施工事例はこちらをご覧ください。
令和6年改正に対応した契約書・施工実績書作成の実務
令和6年以降、工事実績の証明は厳格化され、施工実績書には工事内容の詳細記載と発注者確認が必須となりました。契約書もこの基準を先読みした書き方が求められます。
施工実績書の新要件と記載漏れを防ぐチェックリスト
施工実績書に記載すべき項目は、工事名称・工事地・発注者名・工事期間・工事金額・工事内容の詳細の6点が基本となります。これに加えて、発注者からの署名または押印による確認、および工事完了時の実績確認書の取得が実務上重要です。これまでのように「後日、必要になったら発注者に確認する」という運用では、経営事項審査や許可更新の際に間に合わないケースが増えています。
記載漏れを防ぐには、竣工時のチェックリスト運用が有効です。工事完了報告書と実績確認書をセットで取り交わし、社内の書類保管ルールに沿ってファイリングする流れを確立しておくと、後の申請作業が概ね半分程度の労力で済みます。以下は実績書の必須項目の概要です。
| 記載項目 | 記載内容の目安 | 確認取得の要否 |
|---|---|---|
| 工事名称・工事地 | 正式名称と所在地 | 必須 |
| 工事期間・金額 | 着工日と竣工日、税抜金額 | 必須 |
| 工事内容の詳細 | 工程・使用機材・数量 | 必須 |
| 発注者確認 | 署名または押印 | 必須 |
契約書から実績証明書までの一連の書類流れと承認タイミング
実務上、契約書・工事完了報告書・実績確認書の3点が連動する運用フローを構築することが望ましい形です。契約時点で工事内容と金額を明確にし、竣工時に発注者から実績確認書を受け取り、経営事項審査や許可更新の申請前に社内で書類チェック体制を回す。この一連の流れが定着すれば、申請書類の作成負荷は大きく軽減されます。
これまで対応したお客様の中で多かったのは、契約書は整っているものの、施工中の変更契約や追加工事の記録が曖昧になっているパターンです。工事内容が変更された場合は変更契約書または変更覚書を必ず交わし、実績書の記載と齟齬が生じないようにしておくことが、将来の許可更新でトラブルを避ける鍵となります。
令和6年改正で経営者・現場責任者が確認すべき5つのチェック項目
既存許可の更新時期・従業員資格の要件化・下請け業者の許可状況・施工実績の保管体制・財務基準への対応の5点を、優先順位をつけて対応することが求められます。
許可更新時に改正要件をクリアしているか事前チェックする方法
まず着手すべきは、現在保有している許可証の有効期限確認と、更新時に改正要件へ切り替わる仕組みの理解です。許可の更新時期が近い事業者ほど優先度が高く、更新の半年から1年前には要件チェックを完了しておく体制が理想的です。具体的には、現在の技術者資格が改正後の基準に合致しているか、過去3年間の施工実績が新基準の書類要件を満たしているか、財務諸表が経営事項審査の基準を満たしているかの3点を先行して確認します。
この事前チェックで基準未達が見つかった場合、更新申請までの残り期間で改善策を打つことが可能となります。逆に、更新間際に不備が判明すると、許可の有効期間が空白になるリスクがあり、事業運営に直接的な影響が及びます。優先度をつけるなら、①許可更新時期、②技術者資格、③書類保管体制の順で確認を進めることをおすすめします。
従業員の資格取得・教育計画と予算化
技術者確保は一朝一夕には進みません。施工管理技士試験の受験には実務経験年数が必要であり、既存スタッフの経過措置期限も並行して管理する必要があります。年間の教育計画を立て、受験対策費用・講習受講料・資格取得後の手当てなどを予算に組み込むことで、計画的な人材育成が可能となります。
業界の一般的なデータでは、電気通信工事施工管理技士の合格率は概ね2割から4割程度で推移しており、一発合格は容易ではありません。複数年計画で受験機会を確保することを前提に、社内でのバックアップ体制を整えることが現実的です。新規採用時の資格確認を制度化し、採用時点で保有資格や実務経験の詳細を記録に残しておくことも、将来の許可要件対応で役立ちます。
令和6年改正への対応が遅れた場合のリスク管理と事後対応
改正要件への対応が遅れた場合、許可更新時の基準未達による許可取り消しリスク、無許可工事に問われるリスク、行政指導や改善勧告の対象となるリスクが生じます。事後対応の段取りを整理しておくことが重要です。
許可申請・更新時に基準不適合だった場合の対応フロー
基準不適合が判明した場合、まず不適合の内容を診断し、改善計画を作成することが第一歩となります。技術者資格の不足であれば代替となる有資格者の確保、書類要件の不備であれば過去実績の再整理といった、項目別の対応が必要です。改善計画が現実的な期間内に完了する見込みであれば、行政と相談しながら再申請の準備を進める形が一般的です。
とはいえ、期間内に基準をクリアできない場合の経営判断も想定しておく必要があります。事業規模の見直し、他社との協業、一時的な受注制限など、複数の選択肢を比較検討することになります。この判断は経営全体に影響するため、早い段階で専門家や行政窓口に相談する姿勢が結果的にリスクを抑えることにつながりやすいです。
既に竣工した工事が改正要件と齟齬していた場合の対応
過去に竣工した工事が改正後の基準と齟齬している場合、原則としてその工事は「当時の基準」で判定されます。ただし、実績書として申請に用いる際は、改正後の記載要件に合わせた形での整理が求められるケースがあります。発注者に事情を説明し、実績確認書を後追いで取得できるかを打診することが有効な場合もあります。
これまでお客様からよくいただくご相談として、過去実績の書類が不完全で、更新申請時に慌てて発注者へ確認依頼をするケースがあります。発注者との関係性が良好であれば協力を得られることが多いですが、時間経過とともに担当者交代や組織変更で確認が難しくなる傾向もあります。書類の整備は「工事完了時」に完結させることが、後々の信用維持と円滑な許可更新の両方に寄与します。詳しい業務内容は業務内容・施工事例はこちらからご確認いただけます。ご不明な点があればお問い合わせはこちらまでお気軽にご連絡ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 既取得の許可はいつまで改正前基準で有効ですか
既に取得済みの許可は、次回更新時期までは改正前の基準で有効とされる運用が一般的です。更新時に改正要件への切り替えが義務化される仕組みであり、更新の半年から1年前に要件チェックを行うことをおすすめします。
Q. 資格を持たない既存スタッフの扱いは
経過措置期間中は既存スタッフも従来の位置付けが認められるケースが多いですが、期限内に代替資格の取得や認定講習の受講が必要となる場合があります。人員計画に反映し、年間の教育予算を確保しておくことが実務的な対応となります。
Q. 電気工事と混在する場合の許可は
混合工事では、工事の主目的と作業内容の比重で許可の要否が判定されます。契約書で工事内容を分別記載し、必要に応じて協力業者との分担発注を検討することが望ましい形です。発注者への説明も事前に行うことがトラブル回避につながります。
この記事を書いた理由
著者 – 株式会社両儀
これまでお客様からよくいただくご相談として、令和6年改正の要件が複雑で、どこから対応してよいか不明確というお声をお聞きしています。法令解釈だけでなく、許可更新・書類準備・従業員教育といった具体的な経営運営レベルでの対応が求められている状況です。
この記事が、電気通信工事業を営む経営者・現場責任者の皆様にとって、対応の優先順位を整理し、事業継続の基盤を守るための一助となれば幸いです。
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